Bye Bye Moore

PoCソルジャーな零細事業主が作業メモを残すブログ

東京五輪向け農水産物はGAPが無いと納入できない……筈だが???

GAP(Good Agricultural Practice)は定量的生産手段に関する取り決めの事です。
以前記事にした事もありましたね。
shuzo-kino.hateblo.jp

五輪向け農水産物は、このGAP系の何かが無いと納入できないという事になっています。
この「農水産物」というのには、選手村に飾る花すらも対象になっています。
首都圏で花作ってるのに納入できない……と花き農家さんもボヤいてました。

日本においてGAP習得率は低い

日本はどういうワケか動機が弱いようで、世界的にみても驚異的習得率の低さを誇ります。
欧州においてのGAPは、流通業者の要請から生じ、生産者へ要求したのが始まりとなっています。
日本でも「顔が見える農家」ウンタラの流れで取っていてもオカシクないのですが……普及していません。
これは、日本国内で厳密に適用しようとすると、逆に品質が落ちるという無茶苦茶な理由によるものなんだそうです。
部分最適化の弊害がこんなトコでも出てるんですねぇ。

管理漁業という壁

これに加えて、水産物だと所謂「管理漁業」と呼ばれる収量をコントロールする手法が要求されてます。
地域の資源量から年間収量を決めて、維持可能なレベルで保存しようという考え方です。
まー実に欧州らしい勝手な言い分ですね。
この実現のためには、零細漁船には収入保障、闇ルート撲滅のための法的罰則の整備が必要です。
そんなわけで、日本では(意図せずそうなってしまった)東北以外では実施例皆無です。

このままでは、東京五輪の野菜は全輸入……? いや、そうはならない

というわけで、このままでは目と鼻の先で採れるのに出荷できないという、実に珍妙な事が起こっていました。

……ところが、です。
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37726www.agrinews.co.jp

政府は31日、2020年の東京五輪パラリンピックで日本の食文化を世界に発信するため、関係省庁による連絡会議を設けた。近く初会合を開く。選手村での食事に国産食材を活用するなど、政府で取り組むべきことを検討する。多くの外国人の訪日が見込まれることから、食文化の魅力の発信を強め、農林水産物の輸出拡大を目指す。
(中略)
 五輪の食材調達は、12年のロンドン大会以降、農産物の認証制度を活用するようになった。東京大会の組織委は農業生産工程管理(GAP)などの認証を受けた食材に限らず、独自の調達基準を設ける方向で検討する。

……酷い卓袱台返しを見た気がする。
農協はやっぱり強いんですねぇ。
「GAPがないとオリンピック景気に乗れませんよ!」と煽ってたコンサルさんは今頃青い顔してるでしょう。

なんでそんなにGAPを嫌がるのか

GAPの規格自体はISOシリーズよろしく、町工場の脳味噌でも取得できるような水準の事しか要求していません。
手を洗え、農薬は棚に入れろ、栽培データは残せ……とかそんな話です。

課題を考えると以下のようになるでしょうか。

  • ライセンス費が掛かる事
  • 兼業農家には学習時間捻出がやや厳しい
  • 生真面目に実行すると、ものによっては品質が下がる*1

この辺りは、それこそ農協が手伝えって話なのですが……まぁ面倒事は厭なんでしょうね。

さいごに

この主張がそのまま通るとは思えません。
恐らく日本側は「骨抜き版GAP」とでも言えるものが普及させるように交渉する事になるでしょう。
今もそうであるように、イオン等々の大手流通が品質を担保する形になるはずです。
とはいえ、GAPバブルとでも言うべき流れに冷水がぶっ掛けられた欧州勢の動きが不透明なのは事実。
今後の展開は慎重に見ていくべきでしょう。

*1:欧州の卵は生で喰うとお腹こわしますが、日本はそうじゃないですよね。そういうことです