Bye Bye Moore

PoCソルジャーな零細事業主が作業メモを残すブログ

【読書メモ】 雑兵たちの戦場  中世の傭兵と奴隷狩り

日本に限らず封建時代を生きる人々の大半は農民でした。
農業技術の進歩により面積当たりの収穫量は増え、養える人口が増えました。
ところが、収穫が終わってから次の種蒔きまでは、稼ぎもないのに無駄飯喰らいを維持しないといけません。
この無駄飯喰らいをうまい事、「消費」してムラの利益に繋げようという考えが生まれてしまいます。
さて、流通経路も不十分な時代、それも農閑期にやれ事といえば……少なくとも戦国日本では、近場との戦争……要するに略奪でした。
収奪の対象は収穫物はもちろん、タイトルに示される通り「消費」の対象になるほどいる人間なんかも奴婢としていい商材になったようです。
まぁ、分かっていても現代では受け入れ難い状況ですが、当時の倫理観では罷り通っていたのですね。

そんな調子でヤーヤーとやっていくわけですが、戦場も無限には続きません。
時代が進み天下統一が見えてくると、一連の流れで生じたパワーが困ったことになります。
食い詰めた野士(やし=香具師)つまり雑兵のなれの果て流しの薬売り*1が現れ、
そういう能力のない雑兵は略奪をする始末では、安心安全の商売などできるわけもない。
今度は権力側の都合でこうった不穏分子の「消費」を行っていくことになります。

朝鮮出兵にて「消費」し、それでも余った不穏分子*2は危険な鉱山開発・築城などの社会投資で「消費」していきます。

ところが困った事に、戦国時代のころから一部は国外で取引されていたのです。
一時は(特に朝鮮出兵後では)、その次の「消費先」がフィリピンやシャムに向くのではという懸念もあったようですが、
そういった事もなく、安く使い潰せる鉄砲玉として欧州の東南アジア侵略の先兵として重用されてしまいました。

ようやく国内統制体制が完了した江戸幕府からすれば、外国の争乱に巻き込まれはたまりません。
こういう戦力派遣を公的に禁止、これが鎖国に繋がります。

ナチスドイツ敗残兵も、フランスやポルトガルの植民地維持闘争で安くて強い兵隊として珍重されたという話もありますし、この辺りは歴史は繰り返すモンなんでしょう。
……そうなると、この2022年のウクライナ・ロシア戦争の結果生じた流動人口やよく訓練された兵隊は一体どこで、どんなように「消費」されていくんでしょうか……??

*1:商材の一部には漁などに転用できる毒物も

*2:取引禁止以前に世に散っていた奴婢も含む