Bye Bye Moore

PoCソルジャーな零細事業主が作業メモを残すブログ

【読書メモ】VRは脳をどう変えるか?  仮想現実の心理学

最近は職業訓練なんかでも活用されているVR技術についての本。
メタバースとかいうて流行ってはいますが、元からVRの研究をやってるアカデミアと、VRChat等のギーク層、さらにバズワード化の元凶であるマネーゲーム層ではとらえ方が異なるように感じます。
技術面でも、3年前前後にOculus Riftを使わせてもらった時は視野の端に境界があったりしてイマイチ没入感がないなという印象でした。

Twitter限界集落ではギーク層とマネーゲーム層の声は耳鳴りがするほど聞こえてくるものの、それ以外のアカデミアは何を感じ取っているのか少しきになり、この本を読んでみました。
著者は20年間VR体験まわりを研究している心理学の教授です。
Meta(当時はFacebook)のCEOがOculusを買収する前に意見お伺いに来たというので、結構な大物です。

その大物が研究成果を一般書籍向けに発表しているのが、本書。
曰く、プロスポーツのチャンキング強化に繋がったり、PTSD治療のために事故現場をトレースで実際効果がでている。
ならば、それが暴力のフィードバックになったときには危険だと。
続く注意力の低下やメディアコントロールの件なんて、それテレビの普及頃に一億総白痴化いうて騒ぎになった事と基本的論理展開が似ています。
さらに言えば大宅氏が推奨した活字読めって主張も、ソクラテスが過度な活字化の批判*1て所まで遡る気かって感じですし。

わかっちゃいましたが、有史以来散々言われている、技術応用の光と影論なのでええ加減お腹いっぱい感が拭えません。
マスメディアにせよ、活字化された知識にせよ、お賢い大先生方に心配されるほど大衆は愚かとは思えませんね。
何やかんや否定するエビデンスの類でも出てきそうな気がしそう……いや、技術屋として出て欲しいという方が正確でしょうか。

*1:まぁ、あとで弟子の議事録が有効である事をみて意見を変えたそうですが