Bye Bye Moore

PoCソルジャーな零細事業主が作業メモを残すブログ

【読書メモ】百姓たちの水資源戦争

左巻きな方々の社会階層論や時代劇なんかの影響もあってか、農民というのは権力に虐げられる無力な存在とされているように感じます。
実際には、ムラの権益を守るため武器をとり訴状を書き、抵抗する姿勢もみせる、れっきとした地域勢力でした。
本書では、地域勢力たる農民の闘争を水利権を中心に紹介してくれています。

庄屋みたいなものは地域の知恵者として細々とした物事の仲裁、地域金融の実施なんて事をやりますが、水利権に関わる訴訟も重要な仕事だったようです。
交渉の武器は古老の証言から過去の文献へ、ついに明治になるとフランス流の所有権なんて概念まで出てくる中で、他のムラとの水の管理や分配について交渉は中々にタフそうです。
調べたらリーガルサスペンス風の時代劇とか書けそうですね……いや、もうあるかも。

新田開発の話題もあり、その中に沼と共存するムラの話もでてきます。
私は地元が千葉なので、沼を埋め立てて新田~という話をよく聞いており、あまり沼のメリットというものを考えていませんでした。
紹介されているケースでは沼から得られる各種収穫物で漁業や畜産業があり、それが収入の多様化につながっているので新田開発は止めて欲しいという訴えが受け入れられたケースが紹介されています。

全体の論調として、過開発状態にある自然資源を人間が知恵を絞って持続可能な仕組みを作った……という感じなるのかと思います。
江戸時代でこれなので、現代であればなおの事でしょう。
資源を途上国に求める動きもあるみたいですが、資源が得やすいから余剰人口が増え、学問や商業がすすみ先進国化したわけで……江戸時代や中世中国で散々見られた大飢饉は案外身近に迫っているのかもしれませんね。

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